ヒンメリのフラクタクルな魅力

フラクタル構造とは、たとえばこのシダの葉のように「どんなに小さな一部分をとっても、それが全体と同じ形をあらわしている構造」のことで、自己相似と呼ばれるます。


この性質は海岸線、樹木の枝の形、雲の形、山の起伏、雪の結晶、人体の血管構造など、自然界のあらゆるところに見出されます。

きっかけは息子のお供でフラクタル構造についての数学の体験授業を受けたこと。

規則的な計算をしていくとフラクタルな幾何学が現れ、それがまた別に作った切り紙の模様と一致したときの感動。学生時代にこんな授業を受けていたらわたしももう少し数学が好きになっていたと思う。

1000年以上前に僧侶が瞑想の中で産み出した「宇宙の創造図・曼荼羅」もフラクタルなのですが、なんと、宇宙がフラクタル構造であるという最新の研究があるとか。

わたしがなぜこんなに興奮しているかというと、フィンランドのヒンメリ、リトアニアのソダスもまさにフラクタルだから。

ヒンメリ(フィンランドの麦細工)・ソダス(リトアニアの麦細工)の魅力とは

① 幾何学の美しさ

② 自然とともにあること

ではないかと思います。

この二つの魅力は、一見別々の特徴であるかのようで、いずれもフラクタル構造を見出すことができ、一見無関係のようで深い関係があるように思えてくるのです。

① 幾何学のフラクタル

ヒンメリ・ソダスの基本的立体
正八面体

ソダスの伝統的モチーフであるピラミッド型は、正八面体が集合し全体として大きな正八面体を形作っており、まさにフラクタル構造。

ソダスの伝統的モチーフであるピラミッド型は、正八面体が集合し全体として大きな正八面体を形作っており、まさにフラクタル構造。
上下から見ると小さな四角形の集合が大きな四角形を作り、横からみると小さな三角形の集合が大きな三角形を作っています。
三角形は精神(動)、四角形は肉体(静)などを象徴し、ピラミッド型はあらゆるものの統合・調和を表しているといわれています。

ヒンメリにも、小さな正八面体をつなぎ合わせ大きな正八面体を形作るデザインがあります。

古代ギリシアの哲学者プラトンは「神は常に幾何学する」と言って、数や幾何学的図形の中に宇宙の真理を表す意味が隠されていると考えていました。


プラトンが発見した「プラトン立体」=「宇宙立体」は、各面がすべて同じ正多角形であり五つしかありません。
宇宙を構成する4大元素(火、土、空気、水)がプラトン立体に対応しているとされ、正八面体は「空気」に対応しています。
風に揺れ、気流を動かすヒンメリのエレメンツが空気であることに意味を感じます。

② 自然の循環のフラクタル

ライ麦は、痩せ地でも育ち飢饉を救うため、フィンランドでは神の穀物と呼ばれているそうです。また、収穫したての新しい藁には精霊が宿り、幸福を呼ぶ力があるとされ、翌年の豊穣を祈ってヒンメリが作られてきました。

実際に大地に種を播き、ライ麦を育ててみると、たくましく冬を越し、初夏には2mもの高さまで育ち、凛と立つその姿に強い生命力を感じます。収穫したライ麦の黄金に輝く麦わらでヒンメリを作り、また種を播く。

この小さな循環は、畑の循環の一部であり、地球の循環であり、ひいては宇宙の循環であり、まさにフラクタル構造。


ヒンメリは宇宙の縮図
こうして書くと至極あたりまえのことなのですが、ともすると忘れてしまう「わたしたちは自然の一部である」という感覚を、ヒンメリを通して感じることができるのかもしれません。
参考文献:
・Eija Koski「ヒンメリのハーモニー」
・おおくぼともこ「フィンランドの伝統装飾 ヒンメリ」
・LEADING LIFE https://tenro-in.com/mediagp/readinglife-science/65989/
・マテマティカ https://mathematica.site/
・ヴィリニュス民族文化センターhttps://youtu.be/YxIXgWwbSqU?si=NZeoFKhACy0qdtqC
・高野山霊宝館https://www.reihokan.or.jp/other/m_order/goods/mandala.html